こんにちは。らふぁえるです。
オンラインよりオフラインで関わりのある方に、自己紹介がわりに共有したりもできるニュースレターです。
そうすると頻度が週刊じゃないことがバレるのでちゃんと更新しようと思います。
今週は以下の最新AIニュースを取り上げます。
中国でAI不使用の映画『牛来』が大バズり
AIエージェントOSS「DeepSeek Harness」公開
AnthropicがClaude生成テキストに電子透かしを導入
ChatGPT Atlasがひっそりと終了も次のChatGPTはスクリーンを常時見るように
それではよろしくお願いします。
1. 中国でAI不使用の映画『牛来』が大バズり
ここ数日、中国で面白い現象が起こっています。アニメ映画『牛来』(Niu Lai)の大ヒットです。
まずはそのビジュアルをご覧ください。
制作したのは監督・信雨萌さん(男性)とそのお母さんのたった二人。制作に5年を費やし、中国のフリマアプリ「闲鱼」(シェンユー)で買った中古機材を含め、その費用は一説には200ドル(1600元)とも。
どう考えてもクオリティ的に見劣りするこの作品が公開されたのは8月5日。公開9日目の時点で興行収入はわずか7,169元(約15万円)、観客は全国で300人にも満たないという状況でした。
しかし8月14日、中国のSNSでこの映画が“発見”されるや「CGがひどすぎる」「AI生成のアニメよりひどい」という投稿が拡散。すると映画館はたちまち満席となり、爆音上映ならぬ「爆笑上映」の様子が共有されるようになりました。
Enable 3rd party cookies or use another browser
特に笑いを誘っているのが、主人公の子牛「牛来」が母牛に向かって「マ〜〜マ〜〜〜!!」と叫び、それを聞いた母牛が「牛来!!」と反応する一連のかけあい。SNSでは多くのミーム画像や動画が製造されています。
累計興行収入は8月22日時点で500万ドルを超えていると見られます。
『牛来』の価値が評価されているのは、「映画もAIで作れる時代に、人間が苦心して作った(おそらく)最後の作品」だからでしょう。本物らしい映像がAIで生成できてしまうからこそ、手作りで粗いがその素朴な手仕事が、かえって人々の共感を呼んでいるのです。
AIで誰もが「それらしいもの」を量産できるようになったいま、人の仕事の手触りや物語に価値が逆戻りしている。このことを私たちは覚えておきたいですね。
2. AIエージェントOSS「DeepSeek Harness」公開
8月13日、DeepSeekがAIエージェントOSS「DeepSeek Harness」を公開しました。
これまでAIモデルを主に提供してきたDeepSeek(深度求索)が、Claude Codeのようなエージェントスタックそのものに踏み込んできた形です。
開発者による注目度の指標とされるGitHubのスター獲得数で最速記録を更新したとの報道もあります。
記事のタイトルにあるように、このDeepSeek Harness(DSH)の主張は「Everything is a Plugin(すべてはプラグインである)」というもの。モデルアダプタ、セッション履歴、サンドボックス、そしてエージェントループ自体まで、すべてが差し替え可能な設計になっています。
注目したいのが、その土台となっている「Cordis(コルディス)」というOSSで、これ自体はDeepSeekが新しく作ったものではありません。shigmaという開発者によって作られ、チャットボットフレームワーク「Koishi」の基盤として、約4年間かけて4,000以上のコミュニティプラグインで実戦投入されてきた実績があります。
この「Koishi」という名前は、東方Projectのキャラクター「古明地こいし」から取られたものです。
公開に際しては、北京大学の研究者とDeepSeek-AI Harnessチームの共同による論文「A Programming Paradigm for Spatiotemporal Composability」がプレプリントとして公開されています。型理論や圏論の概念をベースにした、かなり難解な内容です。
このOSSがエポックメイキングと言われるゆえんは、既存のClaude CodeやCodexが「モデルとプロダクトが垂直統合」された作りなのに対して、DeepSeek Harnessではモデル自体も差し替え可能なプラグインだということです。
具体的には、動作中のシステムを再起動することなくモデルやツールをスワップ(swap)できます。それによって、AIエージェントが自分自身のランタイムを安全に書き換える「自己進化型エージェント」を原理的に実現しうる、という見立てのようです。
AIモデルの性能競争が一段落したいま、テック企業の次の戦場が「エージェントの土台」つまりハーネスに移りつつあることを示す、象徴的なプロダクトリリースだと思います。
DeepSeek open sources MIT-licensed Harness for AI coding agents | Open Source For You
What Is Cordis? The Framework Behind DeepSeek Harness | deepseekharness.io
3. AnthropicがClaude生成テキストに電子透かしを導入
Claudeが生成するテキストに「電子透かし(見えない透かし)」を導入するとAnthropicが発表しました。
テキストがClaudeによって生成された可能性を後から検知できるようにする仕組みです。読んでいる人にはまったく区別がつかず、隠し文字が入るわけでもありません。
LLMは文章を生成するとき、次に来る単語を候補の中から確率的に選びます(原理的には。今はその限りではないようですが)。そのとき「どちらを選んでも意味がほぼ同じ」という低リスクの単語選択が無数に発生します。この「どっちでもいい選択」の乱数の出どころをキーにすることで透かしを可能にします。文章全体に目に見えないパターンを残すというわけです。
テキストの電子透かしはこれまで研究こそされてきましたが、主要プロバイダが大規模に製品投入するのは今回が初めてです。EUで8月2日に施行された透明性義務に対応するためで、地域を限定する仕組みがないため全世界に適用されます。
全文を書き換えれば効力を失う、短い文章は検出精度が落ちる、事実の列挙など唯一の正解がある箇所には透かしを入れられない(コードにも非常に弱い)など、課題もあります。検知できるのも「関与した可能性の高さ」までで、人間が書いた証明や別のAIの判定には使えません。
現状、AI(具体的にはChatGPT)が書いた文章は容易に見抜けてしまいますが(というかあれになんで疑問を持たないんですかね…)、今後出てくるモデルはより巧妙になっていく可能性が高いです。そんな中で、AIが書いたのか人間が書いたのかをある程度機械的に判別できる仕組みが整うのは、インターネットに限らず健全なことですね。
4. ChatGPT Atlasがひっそりと終了も次のChatGPTはスクリーンを常時見るように
OpenAIがWebブラウザを出して話題になったのを、まだ覚えている方はいるでしょうか?
macOS向けのAI統合ブラウザ「ChatGPT Atlas」が8月9日、ひっそりと終了しました。2025年10月のローンチからわずか9ヶ月、Windows版は一度もリリースされないままの幕切れでした。
Atlasはリリース当初から「ブラウザ操作中のデータを丸ごとAIに渡すことになる」という、セキュリティおよびプライバシー面での懸念の声が上がっていました。
公式の終了理由は「ワールドシミュレーション研究とロボティクスへのリソース集中」ということになっていますが、まあセキュリティ批判についてはあえて触れてませんね。
喉元過ぎればなんとやらといった感じですが、このAtlas終了と同時に別の不穏な話題が出ています。サム・アルトマン(Sam Altman)氏が「半年以内に、ChatGPTの後継があなたの画面を常に見て、すべての会議に出席し、すべての通話を録音する世界が来る」と語ったのです。
「あなたの人生全体の完璧な文脈を持ち、あなたが見るものすべてを知っている」と聞くと、仕事の面では確かに強力そうですがそれ以外は関わりたくない感じですよね。スクリーンを常時監視されることへの拒否反応は、Microsoft Recall(画面を定期的に記録するWindowsの機能)がプライバシー懸念で物議を醸した件が記憶に新しいです。
Atlasを終了させてこの構想を打ち出したことは、先月Codexアプリを提供終了してChatGPTアプリに吸収したことも思い出させます。Codexの場合はそこそこ人気のアプリでしたが、このタイミングはやはりこっそりCodexに機能を統合する布石かなと思ってしまいます。
利便性とプライバシーのトレードオフという問題は、今後すべてのAIユーザーが向き合うことになりそうです。
以上、今週の週刊創業日記でした。
来週もよろしくお願いします。




